益子焼MASHICOのおしゃれな豆皿 伝統の釉薬が描く手仕事と用の美
手仕事による温もりと、現代的なライフスタイルが静かに交錯する一点の器。栃木県芳賀郡益子町から生み出される伝統的工芸品「益子焼」を用いた陶器ブランドMASHICOが、誰もが知るキャラクター「モンチッチ」を彩り豊かな釉薬で表現した豆皿を発表しました。
【本稿で紐解く3つの核心】
- 益子焼特有のぽってりとした陶土と、7色に輝く伝統的な釉掛けの手仕事
- 民藝運動を牽引した濱田庄司から受け継がれる「用の美」の歴史的系譜
- 現代日本のIP(モンチッチ)と伝統工芸が交差する、最新のアートディレクション
実用的な器としてのルーツを持ちながら、今日ではアートやデザインの文脈でも高い評価を受ける益子焼。本記事ではMASHICOの新作豆皿を起点とし、その背景に流れる土と炎の記憶、そして職人たちが守り抜いてきた「用の美」の哲学へと深く潜入します。
益子焼MASHICOが提示するおしゃれな豆皿の現在地

大量生産による均質化がビジネスの最適解とされる現代において、個体の「揺らぎ」を前提とする伝統工芸は対極の存在です。今回、益子の窯元を中心としたブランド「MASHICO」が発表した新作は、その揺らぎの魅力を逆手に取り、キャラクターの顔面をキャンバスとして土の温もりを提示しています。
職人の手によって一つひとつ施される色彩表現。作られているのは、1974年の誕生以来世界中で愛される「モンチッチ」の顔を全面に押し出した直径約90mmの豆皿です。工業的なプリント技術であれば、寸分違わぬ同一の顔がプリントされるだけでしょう。しかし本製品は伝統的な「益子焼」による釉掛け(くすりがけ)の手法を選択しました。
MASHICO モンチッチ豆皿の特性
- 素材:栃木県益子産の鉄分豊富な重厚な陶土
- 技法:職人の手による流し掛け・浸し掛けの釉薬表現
- 色彩:伝統釉(飴、黒、糠白、青磁)+新規釉薬3色の計7色展開
日本人の食卓において、豆皿は単なる食器以上の意味を持ちます。それは四季の移ろいを数センチの円の中に閉じ込める、いわば食卓のアクセントピースです。モダンなインテリアや北欧家具が並ぶ空間においても、この豆皿が一つあるだけで、空間全体に有機的な「深み」をもたらします。
益子焼の釉薬が放つ7色の表現 飴釉から糠白釉への系譜

益子焼が長年愛されてきた理由の一つに、土地そのものから採掘される物質感の強い「土」と、それに呼応する豊かな「釉薬(ゆうやく)」の組み合わせがあります。益子町周辺で採れる粘土にはガラスの素となるケイ酸と、発色に深く関与する鉄分が多量に含まれています。この粘土は耐火性に優れる半面、可塑性に乏しいため、ろくろで薄く挽くのには適しません。結果として生み出されたのが、特有の分厚く重厚で、手のひらに沈み込むようなあの質感です。 飴釉(あめゆう) 益子焼を代表する定番色。益子北地方で採掘される「芦沼石」を原料とし、深みのあるべっこう飴のような透き通った茶褐色を発色します。釉薬の厚みによって溜まりができ、そこが濃い焦げ茶に光ることで器に立体感が生まれます。 糠白釉(ぬかじろゆう)と黒釉(くろゆう) 籾殻(もみがら)を焼いた灰を主原料とした白く素朴な発色の糠白釉と、鉄分を多量に含み酸化・還元の火加減によって「柚子肌」のような独特の表情を見せる黒釉。これらは土の無骨さを引き立てます。
職人の熟練した技術によって、液状の釉薬を持つ陶器が素早く液の中に浸され、引き上げられます。この一瞬の動作の速度、指先の感覚、その日の気候条件が、焼き上がりの色合いを決定づけるのです。
なぜ益子焼はおしゃれな食器として愛されるのか

益子焼が単なる日用品から、時代を超えて「おしゃれな食器」として再定義される背景には、ひとつの強烈な思想的転換が存在します。
◆1853年:大塚啓三郎の開窯
笠間で修行した大塚啓三郎が益子に窯を築く。東京という大市場に近かったため、水がめや土瓶など、完全な日用雑器として膨大な数が生産されました。
◆1924年:濱田庄司の移住と民藝運動
陶芸家・濱田庄司がイギリスから帰国後に益子へ移住し、無名の職人が作る日用品の中にこそ真の美しさが宿るという「用の美」を提唱。益子焼は芸術の域へと昇華しました。
濱田庄司が提唱した「用の美」という概念は、効率化や均質化に抗う力強い思想でした。使うごとに手に馴染み、欠けや貫入(表面のひび割れ)すらも景色として愛でる。この哲学が根底にあるからこそ、益子焼は現代の洗練されたダイニングテーブルにおいても、決して古びることなく「普遍的なおしゃれさ」を放ち続けるのです。
伝統技術と現代カルチャーの交差点

現代の伝統工芸は、歴史に固執して閉じた世界にとどまるものではありません。MASHICOの挑戦が証明している通り、真に優れた技術は、ポップカルチャーという全く異なるIPを受容する強靭な土台として機能します。
| アプローチ | 物理的性質 | 概念的特長 |
|---|---|---|
| 工業製品(プリント) | 均質で狂いのないインク発色 | 効率的だが経年変化による劣化を伴う |
| 益子焼(手作業の釉掛け) | 炎が作る予期せぬ色ムラと土の凹凸 | 一点モノの揺らぎが持ち手と共鳴する |
職人が意図的にコントロールできない窯の中の景色。色ムラや釉薬の垂れさえも「個性」として愛でる視点は、均一性を求める大量消費社会への静かなアンチテーゼでもあります。この豆皿には、同じ顔をしたモンチッチは一つとして存在しません。すべてが手仕事による一期一会の出会いなのです。
効率化の対極にある余白と手触り

私たちの日常は、恐ろしいほどのスピードで「タイパ」や「無駄の排除」へと突き進んでいます。ビジネスの現場では、いかに不確実性を消し去り、コストを削減し、予測可能な結果を出すかが至上命題として掲げられます。私もかつて、効率という名の下にすべてを数値化しようと生きていた時代がありました。しかし、職人の傍に立ち、彼らの静かな手元を見つめるうち、確信したことがあります。
「人間の感情は、合理性の隙間に落ちた『ノイズ』にこそ強く宿る」
予測不可能な窯の温度変化、職人の息遣いが生み出す微かなミリ単位の釉薬のズレ。それらは工業的には「ノイズ」であり「失敗リスク」と見なされるかもしれません。しかし、完成した器を手のひらに乗せたとき、私たちはその無骨な歪みの中に、圧倒的な生命力と温もりを感じ取ります。完全ではないからこそ、人の心に寄り添う「余白」がそこに生まれるのです。
手仕事が残す痕跡は、
未来への確かな体温となる。
デジタルが世界を覆い尽くそうとも、私たちは土を捏ね、糸を紡ぎ、自らの手で美しさを定義し続ける。非効率の極みとも言えるその狂気的な情熱を乗せた器だけが、100年後の未来へ持ち越せる唯一の哲学となる。
カケラの挑戦は、ここから新たな景色へ向けて加速します!
Reference:
益子焼の陶器ブランド「MASHICO」より 釉薬で表現したカラフルなモンチッチの豆皿が登場です
伝統を身に纏い、1,000年先の未来へ遺す。Kakeraが織り上げる西陣織アロハシャツの哲学と私たちの物語は、CONCEPT、Kakera Aloha、およびABOUTよりご覧いただけます。






















