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国産い草ラグで夏のフローリングを快適に。イケヒコが岩田屋天神で提案する和モダンの畳暮らし

フローリングの上に敷かれた、美しい藍色と黄金色の幾何学模様が特徴的なイケヒコの国産い草ラグと、素足でくつろぐ静謐な和モダンのリビング空間

裸足で土を踏みしめること、限界まで磨き上げられたフローリングという「平滑な境界」に囲まれて暮らす現代、かつて日本の住空間を静かに支えていた「畳(い草)」の存在は、単なる懐古主義的な調度品を超えた、私たちの感性を呼び覚ます精神的な触媒として再定義されつつあります。創業140年を数えるい草の老舗「イケヒコ・コーポレーション」が、福岡・天神の岩田屋本店新館にて開催する期間限定催事は、まさに「フローリングの生活」に対して、もう一度日本の夏が持つ瑞々しい余白を取り戻すための、静寂なる空間の再編の試みです。

本稿の核心(BLUF)

  • 伝統と夏の余白の融合:創業140年のい草老舗イケヒコが提案する、希少な国産い草を用いた現代の和モダンな夏の暮らし。岩田屋本店新館での期間限定催事にて、その圧倒的な質感とモダンデザインをお披露目。
  • 裸足が目覚める機能美:フローリングのベタつきを消し去る国産い草の圧倒的な調湿作用(綿の約3倍)と、生活臭を吸い取る天然の消臭・空気清浄効果。
  • 空間の脱構築と調和:洋室のリビングにポンと置くだけで美しく溶け込む置き畳や、幾何学模様が織りなす「DXランクス」などの高級い草ラグが提示する、和洋の境界を融かす現代の畳インテリア。

私たちは今、あらゆる情報やエンターテインメントが画面の奥へと吸い込まれ、均質でスピード感のある「タイパ(タイムパフォーマンス)」に最適化された暮らしを送っています。その効率性の追求は、私たちの日常から「待つことの豊かさ」や、素材そのものと対話する「身体的感覚」を少しずつ削ぎ落としてきました。今回は、イケヒコが守り抜く「国産い草」の知層と職人技のファクトを解剖し、フローリングに畳という名の「余白」を配置した時に立ち現れる、美学と健やかな夏のライフスタイルについて深く論じていきます。

湿気と匂いを吸い取る。フローリングを夏のオアシスに変える国産い草の調湿力

蒸し暑い夏の光が差し込むリビングで、涼しげに広げられた国産い草ラグの上に落ちる美しい光と影の陰影

夏が近づくにつれ、湿気を含んだ日本の空気は重く沈み、フローリングの表面は人間の足裏から出る皮脂や汗と混ざり合って、ベタベタとした不快な感触へと変化していきます。スリッパを履くことでその不快感から一時的に逃れることはできますが、それは床という「大地との接点」を自ら遮断することに他なりません。素足で歩くことの心地よさを諦めたフローリングの生活に対し、い草は自らの微細な構造を用いて、驚異的なまでの解決策を提示します。い草ラグをフローリングの上にたった一枚敷き詰めるだけで、その空間はまるで呼吸を始めたかのように、涼しく心地よい風を纏った「夏のオアシス」へと生まれ変わるのです。

※い草の調湿機能と空間アプローチについて: い草は、根から水を吸い上げて成長する湿地性の植物です。その内部は、乾燥させてもなお「ミクロの空洞」が無数に連なるスポンジのような三次元立体構造を保ち続けています。これにより、周囲の湿気が高くなると湿気を自らの空洞へと急速に吸い込み、逆に空気が乾燥すると内部に溜めた水分を空気中へとゆっくり放出する、天然の「調湿・除湿器」として機能します。このフローリングという無機質な洋空間へ伝統を美しく適応させ、境界を融かすアプローチについては、過去のコラムである伝統の周縁を拡張する試み──空間の再編が提示する「工芸的」なるものの新しい文脈でも詳しく論じていますが、まさに「用途や空間を脱構築し、現代の文脈で再接続する」ことの好例がここにあります。

この調湿作用の驚異的なファクトは、数値データとしても実証されています。い草の吸湿力は、私たちが夏場に好んで用いる自然素材の代表である「綿(コットン)」と比較して、実におよそ「3倍」に達します。寝汗をかきやすい夏の夜に「寝ござ(い草で織られた寝具用のマット)」を敷いて眠ると、体がベタつかずにサラリとした快適な状態が朝まで続くのは、い草が汗の水分を瞬時に吸い取り、体感温度を下げてくれるからに他なりません。

スポンジ構造がもたらす天然の空気清浄と森林浴効果

さらに、い草の多孔質なスポンジ構造がもたらす恩恵は、水分(湿気)のコントロールだけに留まりません。い草の表面に開いた無数の呼吸孔は、空気中の有害物質である二酸化窒素や、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着し、自らの内部で分解・浄化する能力を持っています。いわば、部屋に敷かれたい草ラグそのものが、電気を一切使わない「静寂なる空気清浄機」として機能しているのです。また、汗の臭い成分であるアンモニアやイソ吉草酸、タバコの臭い、さらにはペットの排泄臭などを強力に吸い取る優れた消臭効果も備えています。換気が難しく匂いがこもりがちな夏の閉ざされた室内において、い草は部屋の空気を常にクリーンで透明感のある状態へと調律し続けてくれるのです。

綿の約3倍を誇る、圧倒的な吸湿スピード
い草の内部にある星型多角形の細胞構造(髄)は、水分を分子レベルで素早く捉える広大な表面積を持っています。人間がコップ一杯分の汗をかくと言われる睡眠時や、素足が床に触れる日常の瞬間において、余分な湿気を瞬時に閉じ込めてベタつきの発生源を根本から絶ちます。
フィトンチッドが紡ぐ、脳を鎮める森林浴アロマ
新しいい草ラグを部屋に敷いた瞬間に立ち上る、あの清々しく甘やかな香り。その成分には、樹木が自らを保護するために放出する天然の化学物質「フィトンチッド」や、紅茶やバニラの香りの元である「バニリン」などが含まれています。これらは人間の自律神経を優しく刺激し、リラックス時の脳波である「α波」を発生させ、部屋にいながらにして深い森の中で瞑想しているかのような極上のリラクゼーションをもたらすことが科学的に証明されています。

このように、水分を吸い、空気を清め、香りで精神を調律するい草の機能は、単なる表面的な装飾(デザイン)ではなく、植物の生命が何万年もかけて獲得してきた「生きるための構造(ロジック)」そのものです。私たちはフローリングの上に国産い草を広げるとき、単に一枚の敷物を消費しているのではない。植物が持つその圧倒的で静かな生態系システムを、自らの住空間へとインストールしているのです。この大自然の空間清浄システムを、現代の職人技はいかにして極限のクオリティへと研ぎ澄ませたのか。その背後にある「国産い草」の長寿命なファクトについて、次の章で深く解き明かしていきます。

粘り強さと色艶。創業140年のイケヒコが九州の土壌から育むい草の長寿命ファクト

美しい光沢を放ちながら正確なピッチで織り上げられた、目が詰まってコシの強い国産い草ラグの細部ディテール

市場を見渡せば、安価な海外産のい草製品があふれています。それらは一見すると国産と大差ないように見えますが、実際に素足で触れ、数ヶ月から数年という時間をともに過ごした瞬間、その品質の差は残酷なまでの「耐久性と美観の崩壊」となって現れます。海外産の安価ない草は、化学肥料による急激な成長促進と不十分な土壌管理により、繊維が細くスカスカで、わずかな摩擦で折れて「ささくれ」になりやすく、色もすぐにくすんでしまいます。これに対し、創業140年を誇るイケヒコが守り抜く「国産い草」は、踏みしめた時の弾力(コシ)から、時を経るごとに黄金色へと育っていく経年変化の色艶まで、まったく別の次元の強度を誇っているのです。

※工芸的なるものの真諦について: 効率的な機械乾燥や安易な化学染料による着色をよしとせず、大地の栄養をじっくり吸わせ、歴史ある「泥染め」の技術を用いて乾燥させる。この気の遠くなるような「非効率な時間と物質の積み重ね」こそが、素材に消えない熱量と本物の寿命を宿します。このタイパ至上主義に対する職人たちの静かな抵抗の美学については、過去のコラムである時代に抗う「工芸的なるもの」の真髄──時間と物質が織りなす静謐なる連なりでも深く考察していますが、まさに「時間を吸収した素材だけが持つ、圧倒的な説得力」が国産い草のコシと艶に宿っています。

国産い草の圧倒的な品質を支えているのは、栽培地である「九州(主に筑後平野や八代平野)」の土壌と気候、精度高い「泥染め」と呼ばれる日本独自の乾燥技術です。九州の栄養豊富な干拓地と温暖な気候は、い草の茎を太く、内部のスポンジ状の細胞(髄)を極限まで緻密に育て上げます。刈り取られた生い草は、伝統的な天然の「染土(粘土)」を溶かした水に浸す泥染めの工程を経て、均一に乾燥させられます。これにより、い草の表面に薄いシリカの皮膜が形成され、美しい「青緑色」が固定されると同時に、紫外線による日焼けから身を守り、抗菌防臭や吸湿性をさらに高める強靭なバリアが宿るのです。

一本一本の太さが生み出す、10年使えるコシの強さ

国産のい草と外国産のい草の違いは、単なる産地ラベルの差異ではありません。それは、茎の太さ、内部のスポンジ組織の密度、および「表皮の厚み」という物理的な構造の違いです。国産い草は一本一本が極めて太く、表皮が肉厚でコシが強いため、乾燥させても潰れることなく強烈な「復元力(コシ)」を保ちます。そのため、リビングなどの頻繁に人が歩く場所に敷いても、繊維がつぶれてペタンコになることがなく、まるで上質なクッションの上を歩いているかのような弾力性が何年も持続します。丁寧に手入れをすれば、国産い草のラグは「10年使える」と言われるほど圧倒的な長寿命を誇ります。

比較項目 国産い草(九州産・イケヒコ仕様) 外国産い草(一般的な安価品)
茎の太さと密度 一本一本が均一に太く、肉厚。内部のスポンジ組織(髄)が極めて緻密に詰まっており、潰れにくい。 成長を急がせるため茎が細く、表皮が薄い。内部の空洞が大きく、弾力性に欠ける。
乾燥と仕上げ 伝統的な天然染土による「泥染め」。表面を鉱物皮膜で保護し、耐久性と抗菌効果を極大化。 機械による強制急速乾燥や、安価な化学染料による着色。表面が脆く、ささくれが発生しやすい。
経年変化(美観) い草自体の油分がじわじわと染み出し、使い込むほどに美しい黄金色の「飴色」へと経年変化する。 油分が少ないため光沢が出ず、日焼けによってただ白っぽくカサカサにくすんでいく。

このように、国産い草の美しさと強さは、自然の恵みを職人が気の遠くなるような年月をかけて手名付けた「物質の結晶」です。使い込むほどに、足裏の摩擦と日光によってい草自体の天然の油分がにじみ出て、新品の青緑色から、息をのむほど美しい「飴色のグラデーション」へと育っていきます。それは、単に劣化していく消費財ではなく、生活の記憶を吸収し、時間をかけて芸術的な美へと熟成されていく工芸の姿そのものです。この本物の国産素材を用い、現代の洋空間に完璧に適応させたイケヒコのプロダクトは、どのような新しい暮らしの提案を見せてくれるのか。福岡・天神の岩田屋本店でベールを脱ぐ、その空間デザインの革新に迫ります。

岩田屋本店で出逢う。和洋の境界を美しく融かす現代の畳プロダクトと空間設計

天神・岩田屋本店のモダンなギャラリースペースに、北欧家具やシンプルなインテリアと見事に融和して配置されたイケヒコの高級い草プロダクト

福岡・天神の地でトレンドを発信し続ける「岩田屋本店 新館」にて開催されるイケヒコの期間限定催事は、畳を「昔ながらの和室の床材」という固定観念から完全に解き放ち、フローリング中心の現代的な住空間へ美しく調和させるための、具体的なライフスタイル提案の場です。展示会場に足を踏み入れた瞬間、まず驚かされるのは、北欧モダンやシンプルなデザイン家具と、い草が織りなす「幾何学模様」が、まるでお互いを待っていたかのように完璧な和洋折衷の美しいシナジーを描いている光景です。そこには、古臭い和風の押し付けは一切なく、現代の感性に静かに寄り添うミニマルな美意識が屹立しています。この自然素材がいかに過酷な手仕事の摩擦を経て受け継がれているかは、伝統の織りを守る職人たちの姿を描いたコラムであるからむし織とは何か。福島県昭和村で紡がれる最高峰の伝統工芸と織姫たちの継承にも通じる、極限のクラフトマンシップの精神を感じさせます。

※和モダン空間の再定義について: 私たちが目指すべきは、単に伝統をそのまま洋室に置くという単純なレイアウトではありません。伝統が持つ本来の精神性や抽象的な美しさを抽出した上で、現代のインテリアの文脈へと自然に溶け込ませるという「意図的な空間設計」です。和の空間が本来持っていた精神的な静寂や間(ま)を、現代アートやモダン家具と調和させて再構築する高度なアプローチについては、過去のコラムである和室の床の間を現代アートで再定義する「茶の湯」のアプローチとはでも述べていますが、イケヒコのデザインい草は、まさに境界線そのものを美しく融解させ、空間の周縁を拡張する役割を担っています。

今回の催目で注目を集めるのは、イケヒコの代表作である「DXランクス」をはじめとした、現代のインテリアに完璧に調和する高級い草ラグの数々です。職人の手によって一本一本丁寧に織り上げられたそのラグは、緻密なブロックチェックやラフな幾何学模様を美しく描き出しており、一見すると美しいモダンカーペットのようです。しかし、その素材は100%国産の極上い草。洋室のリビングやダイニングのテーブル下に敷くだけで、モダンなソファやスチール脚のテーブルと響き合い、部屋全体に洗練された涼空間を出現させます。

フローリングを瞬時に「余白」に変える、高機能置き畳の魔法

また、現代の住環境における最大のソリューションとして支持を広げているのが、イケヒコの「置き畳(ユニット畳)」です。これは、本格的なリフォームを一切行うことなく、フローリングの上に置くだけで「自分だけの小さな和の空間」を作り出せる画期的なアイテムです。裏面には特殊な吸着シートや滑り止め加工が施されており、小さな子どもがその上で走り回ったり、大人が寝転がったりしても、畳がずれて隙間ができるストレスはありません。厚みもしっかりと確保されているため、フローリング特有の硬さを和らげ、階下への防音対策(生活音の緩和)としても絶大な効果を発揮します。赤ちゃんが安全に親しみやすく発育できるプレイングスペースとして、あるいはテレワークの合間に深く寝そべってリフレッシュする瞑想の床として、洋室の真ん中に豊かな「生活の余白」を出現させることができるのです。

平滑なフローリングの境界を融かし
素足が直接呼吸を始める
現代のモダンな畳暮らし。

このように、イケヒコのい草プロダクトは、単に「和室が恋しいから畳を置く」という消極的な選択肢ではありません。洋の空間が持つ洗練された合理性と、和の空間が持つ深い感性(余白)を対話させ、新しい次元の心地よさを構築する、きわめて能動的でクリエイティブな「空間の再編」です。この美しくモダンに調律されたい草の涼しさを、私たちはどのようにして日常の中で慈しみ、長く使い続けていくべきなのか。ささくれを防ぎ、カビを寄せ付けないための、シンプルで愛情のこもったお手入れの知恵を、次の章でご紹介します。

育てるように慈しむ。ささくれを防ぎカビを寄せ付けないシンプルなお手入れ

日陰で風通しの良い場所に干され、清々しく乾いた香りを放つい草ラグと、優しくブラッシングする職人の手仕事

日本の伝統的な道具の美しさは、人間の「ケア(手入れ)」という関与を経て初めて、その本来の輝きを持続させます。い草ラグや置き畳も同様に、ただ敷いて放置するのではない。素材が持つ「呼吸」を優しく手助けするようなシンプルなお手入れを重ねることで、その表情はより深く、より強靭に育っていきます。しかし、現代のフローリング用洗剤や、水分をたっぷり使った「水拭き」といった誤ったお手入れをい草に施してしまうと、それはカビの発生や繊維の痛みを引き起こす最大の原因となってしまいます。い草という生きた自然素材に寄り添い、共に暮らすための正しいお手入れは、驚くほどシンプルで、かつ愛情に満ちたプロセスです。

※手仕事が遺す痕跡と経年美について: い草に触れ、日々優しく乾拭きを重ねることで、繊維の表面には人間の手足が持つ油分と摩擦が少しずつ蓄積され、特有の艶やかな皮膜(パティナ)が形成されます。この「完璧に制御されない、時間と人の関与によって育つ不完全な美」については、過去のコラムであるアノニマスの痕跡と不完全なる美。時間を吸収する工芸が切り拓く、新たな審美の地平でも詳しく論じていますが、まさに「人が道具を使い込み、育てることで初めて完成する美の境地」がい草のお手入れの先にあります。

い草のお手入れにおける「絶対原則」は、水分を一切使わない【乾拭き(からぶき)】です。い草の表面には泥染めの天然鉱物の微細な粒子が載っており、これが日焼けやカビを防ぐ防壁となっています。購入したばかりのい草ラグを水拭きしてしまうと、この大切な防壁を洗い流してしまい、さらに内部のスポンジ構造に過剰な水分を染み込ませてカビを大発生させる原因になります。日々の掃除は、乾いた雑巾やフローリング用ドライシートで、い草の織り目に沿って優しく拭き取るだけで十分です。掃除機をかける際も、織り目を傷つけないよう、目に沿ってゆっくりと滑らせるのが鉄則です。

もしものトラブルに向き合う、3つのレスキューメソッド

い草を長く愛用する中で、避けては通れないのが「ささくれ(繊維の切れ)」や、湿気の多い梅雨時期の「カビ」、およびオフシーズンの「保管」に関するトラブルです。これらの不測の事態に直面したとき、焦って無理に引っ張ったり、強い薬剤を使ったりしてはいけません。い草の呼吸を止めず、その美しさを優しく蘇生させるためのシンプルな対処法を以下に整理します。

ささくれ対策:決して引っ張らず、根元から爪切りでカット
長年使い込むと、歩行の摩擦によってい草の繊維が一本飛び出し、「ささくれ」になることがあります。これを発見した際、指で無理に引っ張って抜こうとするのは絶対に厳禁です。隣り合う織り糸まで巻き込んで引きちぎってしまい、大きな穴やほつれの原因になります。正しくは、飛び出したささくれを爪切りや小さなハサミで「根元から優しくカット」すること。国産い草は高密度で織られているため、一本を根元で切るだけで、他の繊維が詰まって穴が広がるのを防ぎ、美しい平滑な表面を維持できます。
カビの発生:水拭きを排し、消毒用アルコールでブラッシング
梅雨や夏の長雨の時期、部屋が極度の高温多湿になると、い草が水分を吸い込みすぎて表面に青白いカビが発生することがあります。この時、最もやってはいけないのが「水拭き」や「カビ取り剤の散布」です。水分はカビをさらに活性化させ、強い塩素系洗剤はい草を激しく漂白・劣化させてしまいます。正解は、市販の【消毒用エタノール(アルコール)】をスプレーボトルで軽く吹きかけ、カビの菌糸を殺菌した上で、タワシや歯ブラシを使って「織り目に沿ってカビを優しくかき出す」こと。その後、掃除機で吸い取り、風通しの良い日陰で十分に「陰干し」をすれば、い草本来の清々しい表情と香りが完全に取り戻せます。
シーズンオフの保管:陰干しを施し、新聞紙に包んで暗所へ
秋を迎え、い草ラグを片付ける際は、まずカラリと晴れた日に2時間ほど「陰干し」を行い、内部の水分を完全に抜きます。その後、掃除機でホコリを綺麗に吸い取り、絶対にビニール袋に入れることなく、【新聞紙】で厳重に包んでください。新聞紙がい草に代わって湿気を適度に吸放湿し、カビの発生を完全に抑えます。あとは、直射日光が当たらず、風通しの良い乾燥した押し入れや天袋に保管すれば、翌年の初夏に再び箱を開けたとき、あの懐かしく甘やかな「新品同様のい草の香り」があなたを温かく迎えてくれるでしょう。

このように、い草のお手入れとは、自然の不規則性(湿気や摩擦)に対して力で対抗するのではなく、その呼吸に寄り添い、人間の手をほんの少し添えるという「受容とケアの美学」です。このシンプルなお手入れの繰り返しによって、国産い草のラグはより艶やかに、世界に一つだけのあなたの生活の飴色へと美しく育っていきます。では、効率とスピードが支配するこの現代社会において、このように「時間をかけて素材を育てること」や「い草の香りに包まれて深く呼吸すること」には、どのような普遍的な価値があるのか。最終章にて、静寂なる和の余白がもたらす本質的な「価値」について論考を結びます。

タイパの砂漠に「余白」を。い草が薫る非効率で豊かな時間と身体感覚の蘇生

深く座った人間の足元に広がるい草ラグの美しいグラデーションと、差し込む自然光が落とす長い影が演出する静寂な時間の流れ

私たちの日常は、知らず知らずのうちに「効率」という強迫観念に侵食されています。一歩外に出れば、スマホの画面は私たちの関心や時間を1秒単位で刈り取ろうとするアルゴリズムに満ちており、仕事においても「手っ取り早い正解」や「一時しのぎの最適化」ばかりが求められ、時間をかけて根本を整えるという最も大切なプロセスが、非効率の名の下に放棄されがちです。すべてを数値化し、即時に答えを手に入れようとするその「待てない」焦りと不安は、私たちの心に絶え間ない疲弊をもたらし、感性を深く「のっぺり化」させてきました。このようなタイパの砂漠と呼ぶべき現代において、い草という素材が放つ清々しい香りは、私たちの閉ざされた五感を開放し、失われかけた「思考体力」を蘇生させるための、最も贅沢なリハビリテーションとして機能するのです。

い草が私たちの手元に届くまでには、途方もない非効率な時間と、職人たちの愚直なまでの「待つ力」が費やされています。畑に苗を植えてから収穫するまでの厳格な水管理、日の出前に行われる過酷な喜び、そして粘土を用いた泥染めと、天候を見極めながら行われるデリケートな乾燥の工程。失敗すればすべてが灰燼に帰すという強烈なプレッシャー(摩擦)のなかで、職人たちは決してスピードを急ぐことなく、ただひたすらに時間をかけて素材の力を最大値まで引き出し続けます。この「自然の不規則性を受け入れ、時間をかけることを恐れない」職人たちの姿勢は、現代の安易なタイパ主義に対する静かなカウンターであり、人間の手の温もりが宿るものづくり本来の矜持です。この気の遠くなるような連続性をやめずに紡ぎ続ける執念については、古代の金工技術と現代の身体感覚の接続を論じたコラムである斑鳩の文化財が語る仏教美術の真髄。古代の金工技術と動物たちに宿る祈りでも深く共振するテーマですが、時間をかけることのなかにこそ、私たちの魂を揺さぶる「本物の美」が宿るのです。

「私たちは、ただ涼しい敷物を求めているのではない。
い草の香りがもたらす静寂のなかで、
焦る心を一度手放し、深く息をするための『余白』を求めているのだ」

予測不可能な出来事(未来の不安や思い通りにいかない組織の壁)に直面したとき、私たちが取るべき本当の強さとは、それを力づくでねじ伏せようとすることではありません。その不規則性をすべて「受容」した上で、自らの行動やあり方をしなやかに最適化していくこと。い草が、湿気をすべて吸い取って部屋を涼しく保り、自らの色が変化していくことを受け入れて味わいを深めていくように、私たちもまた、日々の泥臭い摩擦から逃げず、それを自らの血肉(ロジック)へと翻訳しながら、やめずに積み重ねていくしかありません。「世間の普通」や「他人の作った攻略本」という他者軸に流されそうになるときこそ、い草の上に寝転び、五感を開いて、「これが自分にとってカッコいいか(俺っぽさ)」という、内なる美意識の羅針盤を静かに調律し直す。その静寂な時間のなかでこそ、私たちは自らの人生という名の文化を、真に創り上げることができるのです。

天神・岩田屋本店のモダンな空間で出逢う、イケヒコの国産い草プロダクト。それは、単なる夏の風物詩ではありません。あなたの部屋のフローリングの上に、懐かしくて新しい「思考の余白」を出現させ、素足で生きる心地よさを日々育んでいくための、最もソリッドで美しいライフスタイルの宣言なのです。手の中にあるい草の香りを深く吸い込み、冷たい床の上に寝そべる瞬間。あなたの新しい夏の物語が、そこから静かに、そして圧倒的な美しさで始まっていきます。


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